カスタム Gem × Google Drive で実現!セキュリティチェックシート回答の半自動化

こんにちは、CTOの小笠原(@yamitzky)です。

今回は、Gemini Workspace の「カスタム Gem」を使って、セキュリティチェックシートへの回答を”半”自動化した取り組みについて紹介します。社内ドキュメントを RAG 的に活用するちょっとしたテクニックも含まれているので、同じような業務課題を抱えている方の参考になれば幸いです。

背景:セキュリティチェックシートの悩み

JX通信社では「FASTALERT」というBtoB SaaSを提供しています。企業様に導入いただくにあたって、セキュリティチェックシートへの回答を求められることがあります。セキュリティチェックシートに回答する際の課題としては、以下のようなものがありました。

  • 質問項目が多く、時間がかかる(数十〜百問以上のことも)
  • 企業ごとにフォーマットが異なる
  • 一方で、どの企業でも回答する内容は似ている
  • 過去に何度も同じような回答をしている

セキュリティチェックシートへの回答を簡略化するためのSaaSなども存在しますが、まずは無料でできる範囲を検討することになりました。

解決策:Gemini Workspace のカスタム Gem

この問題を解決するために、Gemini Workspace の「カスタム Gem」を活用することにしました。

カスタム Gem とは

Gemini Workspace には、自分専用の AI アシスタント「Gem」を作成できる機能があります。ChatGPTでいうGPTsです。Gem には事前のプロンプトや解答ルールなどを設定することができますが、それだけでなく、Google Drive 上のファイルを参照する こともできます。この作成したカスタム Gem は、社内で任意のグループに共有することもできます。

つまり、社内ドキュメントを「知識」として持った、社内専用アシスタントを作れるわけです。これを使えば、過去の回答実績や社内規約を踏まえた回答を生成してもらえます。

今回作成したカスタム Gem では、以下のように設定してみました。

参照させるファイル

今回のカスタム Gem には、以下のドキュメントを参照させました。

  1. 社内のセキュリティ規約ドキュメント - 情報セキュリティポリシーなど
  2. 模範解答 doc - 過去のチェックシート回答をまとめたもの

特に重要なのが「模範解答 doc」で、今回の取り組みのうち大部分が、このドキュメントを作る作業でした。とはいえ、この作業も Gemini を使ってかなり楽をしています。

参照ドキュメントの準備

模範解答 doc の作り方

FASTALERT」は多くの企業に導入いただいており、その過程でたくさんのセキュリティチェックシートに回答してきています。しかしながら、過去の回答実績は Excel や PDF など、さまざまな形式で保存されていました。中には、Excel マクロを活用したもの、セレクトボックスがあるものなどもあります。これをそのまま Gem に読ませてもうまく参照できない(誤った回答をすることがある)ので、 Q&A 形式のプレーンテキストに変換することにしました。

変換には、以下のようなプロンプトで Gemini に指示しました。

このドキュメントを、1問1答形式で、内容を欠けることなく、Google Docs 化してください。
書き方は必ず「質問 → 答え」となるようにしてください。

例えば、元の Excel データがこのような感じだったとします。

質問項目 回答 備考
データの暗号化は実施していますか はい。保存時はAES-256、通信時はTLS1.3を使用

これが、以下のような形式に変換されます。

Q: データの暗号化は実施していますか
A: はい。保存時はAES-256、通信時はTLS1.3を使用しています。

このように1問1答形式にすることで、Gem が質問と回答の対応関係を正しく理解できるようになります。

なぜプレーンテキストに変換するのか

Excel や PDF のままだと、表の構造やレイアウト情報がノイズになってしまいます。シンプルな Q&A 形式にすることで、Gem が「この質問にはこの回答」というマッピングをしやすくなります。RAG(Retrieval-Augmented Generation)でいうところの、検索しやすいチャンク分割をしているイメージです。

以前は元の回答ファイル(ExcelやPDF自体)を NotebookLM に参照させていましたが、誤った参照をしたり、すでに内容が変わっている古い回答を参照してしまうことがありました。回答案マスタを作ることで、精度を改善することができました。

実際の使い方と効果

Gem への質問例

カスタム Gem を作成したら、あとはチェックシートの質問を投げるだけです。

以下のセキュリティチェックシートの質問に回答してください。
過去の回答実績と社内規約に基づいて、適切な回答を1行で作成してください。

Q1. サーバーはどこの国に構築されていますか?

出力イメージ

Gem は参照ドキュメントを踏まえて、以下のような回答を生成してくれます。

A1. サーバーは日本国内(Amazon Web Services および Google Cloud の東京リージョン)に構築されています 。

過去の回答と整合性のとれた内容が出てくるので、あとは必要に応じて微調整するだけです。

実際の動作確認

以下は、架空のセキュリティチェックシートのExcel ファイルを渡した例です。

Excel ファイル自体の読み書きは残念ながらできませんが、Google スプレッドシートへのエクスポートが可能なので、短い作業時間で回答できます。

やらなかったこと

Gem の社内配布

カスタム Gem 自体は特定のユーザー、グループに共有することができますが、今回は行っていません。あくまで専門家(情シス部門)が回答の正しさを保証する必要があるためです。

完全自動化

今回、元の Excel ファイルへの書き込みは目指していません。これは、

  • Excel に直接書き込みができる AI サービスは限られているが、それよりも RAG の精度を重視していた
  • 企業から受領する Excel ファイルの中には複雑な構造のもの、マクロを使ったものなどがあり、難易度が高いと想定した

ことなどが理由です。

今後の展望

  • 新しいチェックシートに回答するたびに模範解答 doc を更新し、知識を蓄積していく
  • 他の定型業務(FAQ対応など)にも同じアプローチを適用したり、社内での活用を増やしていく
  • ちょうど2026年1月12日に発表された Claude Cowork なども気になっており、こういったツールとの組み合わせも試してみたい

まとめ

Gemini Workspace のカスタム Gem を使って、セキュリティチェックシートへの回答を”半”自動化しました。ポイントは、過去の回答実績を Q&A 形式のプレーンテキストに変換して参照させること。これにより、社内ドキュメントを RAG 的に活用した専用アシスタントを簡単に作ることができます。

似たような定型業務に悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。